「創発」について

なぜ、いま創発への取り組みが必要か

当社が創発をコンサルティングのベースにする理由

「創発」とは、なにか

1+1は2にならない。

 100の成果を作る人を10人集めると、1,000の成果は作れません。面白いことに、組織によって100×10人が500になってしまう場合も、あるいは2,000になる場合もあります。
 感情、人間関係や組織風土、リーダシップ、仕組みなどの内的要因、あるいは競合や技術革新、市場動向などの外的環境の中にあり、複雑な要因・環境の中で仕事をしている私たちは、数字の足し算では単純に計算できるものではないからです。
 これを目的に合わせ、戦略化し、結果を作るために適合させるために、マネジメントが必要になるわけですが、近年はそれだけでは十分でなくなってきました。

 

掛け算でもなく、「溶け込み、新たな何かを『出現』させること」

 こういう話をすると、よく「足し算ではなく掛け算」「いや、掛け算でもなく、可能性は無限大」と言ったりしますが、創発というのは「新しい性質や特性が『出現』される」という意味合いに近いものです。
 個々人としての能力は限界があっても、それらが組織全体に溶け込み、関わり合い、力を提供しあうことで、まったく新しい価値を生み出すこと、といってもよいでしょう。
 

創発の例として、アリ塚

 アリのような小さな生き物は、単体で外敵から身を守れるほとの力はまったくありませんが、集団で行動し大きなアリ塚という巨大マンションをつくり、そこで、必要な生産、繁殖を繰り返すことができます。また、集団になることで、大きな獲物も食べ物とすることができます。体も小さく、計画や設計をすることすらできない、意思を持たないアリがなぜこのような大事業ができるのでしょうか。
 個体としては取るに足らない生きものが集団となり、単なる「個の集合体」を超えたまったく次元のちがう特性を持つ現象が「創発」といいます。創発は、アリとアリ塚の例だけではなく、自然界、科学分野のあらゆるところで見られます。
 

優秀な人だけいればよい?

 組織は2-6-2とよく言われます。意欲や能力の高い人2割と意欲すらない人2割の間に、6割の追随者(時には面従腹背になったりする人)がいると言われています。したがって、能力意欲の高い人2割に組織はかかっている。だから、管理者やリーダーの育成は不可欠だということで、高い研修費を払い続けている企業が多くあります。
 くだんのアリの集団の行動によると、上位2割のアリだけとり分け、少数精鋭化しようとしても、その2割の中でもやはり「2-6-2」に分かれるようです。(実験したわけではありませんが・・)
 この自然界(アリ?)の前提を思い切って人の組織に当てはめてしまうならば、創発という考え方や志向を組織のリーダーは持ち合わせておいたほうが、より的確な経営ができるのではないかと考え、当社のあらゆる分野におけるサービスの軸に置くようになりました。
 

当社が創発にこだわる理由

個の成果を追求し続けた失敗

  サラリーマン時代、私は営業マンでした。営業は数字がすべて、自分の能力を表現するには数字しかない。人一倍その当時の専門分野(マーケティング手法と費用対効果)について勉強し、その知見をもとに、クライアントに様々な提案をしてきました。その結果おかげさまで入社後すぐに、これまでにない記録的な個人業績を挙げるまでになりました。
 この経験は、「個がすべて」「成果がすべて」という考え方をベースに独立後もクライアントに関わっていくことにつながります。人事評価や給与システム、マニュアル作りも「どれだけその人が成果をつくったか」をベースにガラリと変えてしまうというような荒業も使いました。
 それは、人の倍努力したら、結果がついてくる時代背景があったからで、まさに「24時間戦えるか!」の世界でした。
 しかし、人と比べて努力し結果をつくるだけでは疲弊感や組織への忠誠心や仕事への誇りや仲間との協働など、関係性を保った、人として大切なことをないがしろにする組織風土が根付き、離職者が増えるという状況を目の当たりにします。それだけではなく、社員からは猛反発を食らい、「あいつの言うことだけは聞きたくない」となり、孤立します。(こうなったら、仕事はできないですよね。)
 

井戸を掘ったら汲み上げるのは任せる

 社長の仕事は、儲けるネタ(タネ)を作ることだと考えています。創業者や第二創業者が「偉い」のは、「ここに井戸を掘ろう!」と決めて取り掛かったからです。その井戸の周りに草木が生え、果実が成る。そこに、人々(社員)が集い、水をくみ上げる。
 私が今でも、起業・創業に関心があり、そういう人を応援したいと思うのは、起業家こそが社会の循環ポンプになると信じているからです。
 しかし、いつまでも創業者は自ら井戸をくみ上げることはできません。あるいは、いつしか、その井戸は枯れてしまうかもしれませんし、ポンプが壊れてしまうかもしれません。
 企業が成長し続けるために、新たな革新やチャレンジが必要になるのはこのような環境の変化に対応することが必要になります。
 それを、一部の優秀な人だけでなく、まさに「創発」のアプローチで進めていくことが、変化に対応するだけでなく、「全体と個を輝かせるため」に求められることであると考えています。
 

コントロールからマネジメントへ、
そして、イマージェンスemergence(創発)

 いまだに、コントロールとマネジメントをはき違えている経営者は多いです。コントロール(制御)は、「一定の枠内に収める」「異常値を出さない」ということですが、これを人事や育成につなげてしまっている人がいます。いわゆる、マニュアル通りに行い、ミスを許さない。という指導、評価です。これでは、機械と変わりませんし、そのうちAIやロボットに取って代わられてしまいます。
 マネジメントはコントロールと違い「人の能力特性を活かす」という意味合いがあります。だからこそ、マネージャーは人間をよく知り、個々の特性に寄り添わないといけないわけで、人間嫌いな人には務まりません。これにより、新たな成長や新しい発想が生まれたりします。中小企業こそ、マネジメントの本質的意義を知らないといけないと考えます。
 そしてさらにその次に目指すべきは、emergence(創発)です。(なぜ、ここだけ、英語にしたかと言いますと、コントロール→マネジメント→創発では語呂がよくないと感じたからです。)

 組織として個の集合体ではなく、個が有機的に関わりあうことで、新しい価値、イノベーション、これまで想像もつかなかったような大きな成果を志向することが必要な時代にもはやなってきたからです。
 私の志向するあるべき企業運営、人材育成、組織開発、そして企業間コラボ(シェア)の在り方がこれまでの実体験を通して「創発に行き着く」と考えています。そのようなコンセプトをベースに、企業を元気にしていくための、方法論を提供しています。
 

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